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釣り人の嘘。

2024.4.18

釣れればたちまち有頂天になり、釣れなければ簡単に絶望してしまう釣り人の滑稽を、楽観的悲観主義者と喝破したのは、あの開高健だ。釣り人に話をさせるときは、両手を縛れとは、話す度にサイズが上がっていく彼らの無邪気を揶揄する、どこかの国の古い諺。

逃がした魚は大きい。これはもう、釣りというジャンルを遥かに超えて、幸運の喪失と悔恨を表す普遍的な言い回しになっている。ことほどさように、釣りや釣り人の振る舞いには、人間が誰しも抱えている葛藤や煩悩が凝縮されている気がして仕方がない。それが趣味という免罪符を与えられて、さらにわかりやすく増幅しているように見えてくるのだ。
釣りが趣味だと言うと、気が長いと思われがちだが、自分も仲間もそんな悠長なヤツはひとりもいない。圧倒的に短気な連中が多いと思う。また、自然に癒されてステキですねという目線もあるけれど、胸の内は楽観と悲観を往復する俗の権化だ。出掛けるときは100年に1度の日だと信じ、ボウズを喰らうともう魚は絶滅したと毒を吐く。釣り人って可愛い。

シーズン初の1匹。10cmほどの幼魚。恥ず。

by 江副 直樹 2024-4-18 10:10 
EZOE naoki

田舎を拠点のプロデュース稼業。その日々仕事雑感、問わず語り。

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