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花は桜木。

2020.4.13

今年も桜を見送った。三寒四温のリズムが早まり始める頃、山桜が花弁を開く。ソメイヨシノほど桃色は強くなく、ほぼ白に近い品のいい花が咲いて、いよいよ春の到来。毎年毎年、胸の奥からざわついてきて、ここからしばらくは、陶然と焦燥の日々が続く。悩ましい。

なぜ、これほど桜に惹かれるのかわからない。僕に限らず、多くの日本人が桜に魅入られてきた。花は桜木、人は武士。最上の生き様を謳った好きな古諺だ。満開となった途端に散る潔さは、先の戦争では悪意で汚されたりもしたが、桜花の散り様はただ純粋に胸を打つ。視界を横切るたくさんの花びらを桜吹雪、水面に落ちた花びらの連なりを花筏と呼ぶ粋。
言葉の紡ぎ方で、同じ出来事が異なるニュアンスで刻まれる。やはり、世は見立て。自然の発露をどう受け止めるかで人生の佇まいは変わる。永らく、生理の奥底に働きかける揺さぶりに、何度も何度も翻弄されている。慣れることもなく、飽きることもなく。来春も桜はまた咲くだろう。コロナ禍の収束を願いつつ、来年こそは、優雅に花見と洒落てみたい。

朝陽に照らされる疎水沿いの並木。ゴージャス。

ここから大量の花びらが流れに落ちる。儚き刻。

夕暮れ、満開の桜の上にゆっくりと満月が上がった。

散歩道の側溝に、人知れず花弁の川が現れる。

by 江副 直樹 2020-4-13 8:08 
EZOE naoki

田舎を拠点のプロデュース稼業。その日々仕事雑感、問わず語り。

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