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少し冷え込んできていると言いながら、そこは三寒四温。春の足音は徐々に大きく。

冬の厳しい山の暮らしでは、春の訪れはことのほかうれしい。年が明け、しばらくすると、心身はいつの間にか、季節の変わり目の気配を探している。枯れ野が広がる冬期の風景に最初に起こる変化は、フキノトウだろうか。黄緑の蕾の鮮やかなこと。

日当たりのいい草地に、ぽつりぽつりと顔を出すフキノトウは、春野菜に多い爽やかな苦みをまとって、天ぷらあたりで、必ず食したい素材だ。それを合図とするかのように、あちこちに春は充満してくる。庭の端に並べて植えた水仙は、たくさんの葉先で表土を押し分けて伸びてくる。皆で話し合ったかのように、同時に出てくる様は微笑ましい。
集落のあちこちで枝を伸ばす梅の木は、日に日に蕾を膨らませて、開花間近になると、花弁の色が透けるほど満を持している。そしてこの時季は、川に足を運ぶことが多くなるが、渓流の畔には必ずと言っていいくらい、猫柳が次々と銀色の花穂を光らせる。分母庵の周囲には美しいピンク猫柳の株があって、それを見るとやおらせせらぎを思い出す。

週末は出たり入ったり。締め切り仕事も数本。はいはい、頑張りますとも。

朝露を含んで。

慣れない頃はありったけ採っていた。なあに、いくらでも出てくるのだ。

土を押し分けて。

塀に沿ってずらりと並ぶ水仙の小径。毎年少しずつ増えている気がする。

三分咲きの梅。

白梅は白、紅梅は赤い蕾を膨らませて、風景に淡い彩色を施すのである。

ピンクの猫柳。

繊毛に覆われた花穂も美しい。川の猫柳はさらにきめ細かな銀色に包まれる。

by 江副 直樹 2012-3-10 23:11 
EZOE naoki

田舎を拠点のプロデュース稼業。その日々仕事雑感、問わず語り。

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