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苔が好きだ。地味で湿っぽい植物だが、いつの頃からか、惹かれ続けている。正確に言うと、苔そのものより、苔むした環境を好む。石庭よりも、苔の庭がいいし、磨かれた新しい石より、苔をまとった古い切石が良い。苔に覆われた景色を見ると心が落ち着く。

詫び寂(わびさび)は、日本固有の素晴らしい美意識だと思っているが、苔はその中でも重要な要素だ。木にもコンクリートにも苔は生えるが、最上は、切り出された自然石に、どこからか飛んできた胞子が着床し、永い時間を掛けて、少しずつ育つもの。人為的な加工では決して手に入らない、味わい、風情に満ちた表情。花の美しさとは異なるもうひとつの美。
我が家の外構にも石をたくさん配置している。元々、古い丸石の石垣もあったし、すぐそばの神社との連続性も考えて、表玄関や車庫の入り口、洗い場などに、切石を多く使った。それが6年を経て、徐々に苔が付き、ようやく周囲と雰囲気が馴染み始めている。この嬉しさはなんだろう?時の蓄積?自然との調和?言葉にするにはもう少し掛かりそうである。

苔は雨が降ると途端に瑞々しさを増す。その上に楠の落ち葉が一枚。

境内の石柵の上を覆う分厚いスギゴケ。何度も手で触ったことがある。

我が家の石垣の苔。百日紅の葉を載せているから、秋口の一枚だ。

表玄関の階段もいい感じになってきた。まだまだ渋くなるだろう。

by 江副 直樹 2019-1-6 21:09 
EZOE naoki

田舎を拠点のプロデュース稼業。その日々仕事雑感、問わず語り。

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