コンプラ禍。

世の中には、さまざまな新たな災いが現れる。誰も予想もしなかったコロナはその最たるもの。しかし、そうは見えずに社会を蝕む恐ろしい災厄もある。僕は、最近流行のコンプライアンスは、実はコロナ以上の猛烈なウィルスなのではないかと密かにいぶかっている。

社会が経済的に豊かになり、暮らしが成熟していくと、なぜか人はさらに強欲になる。もっと正しく、美しく、純粋になりたがる。メディアを賑わす日々のゴシップは、毒への攻撃、排斥ばかり。それを正義と信じ、崇める。しかし、それは本当に進化か。薄っぺらく、どこか子供じみた振る舞い。コンプラブームもまた世の趨勢、生まれるべくして生まれている。
コンプライアンスは、法令・ルールの遵守と訳される。まるで良いことのように受け入れられ、広がっていく。ところが、それが殊更叫ばれるとき、空気は必ず忖度、自主規制を求めてくる。かくして、斬新や過激や冒険は疎まれ、時代の閉塞はますます頑なになっていく。僕はそれを、コロナ禍よりも恐ろしいコンプラ禍と呼んでいる。くわばらくわばら。

僕はもう戸外では着けるのを辞めた。