過疎と過密。
2020.12.7コロナ一色となった2020年。暮らしや仕事にまつわるさまざまな価値観が、根底から揺さぶられた1年だった。中でも世間を賑わせたのは、「密」の文字。感染者が明らかに都市部で多発していることもあって、3密などといった新たなキーワードが生まれ、広まった。
しかし、それまで流布していたのは、圧倒的にその対極にあった「過疎」だった。ローカルの地域プロジェクトが多い僕にとって、過疎は日常的に見慣れた言葉であり、概念だ。過疎が起こっているとすれば、その裏側には過密があるはずだった。言わずと知れた都市の存在だが、コロナ禍はその両者のアンバランスを、一気に露呈させたと言っていい。
過疎の村に12年間暮らした。高齢化と人口減少に苛まれる田舎をたくさん見てきた。そこへ来てコロナである。この未曾有の災厄の本質は、経済の南北問題だと思っているが、過疎もまた近代の経済の有り様が招いた困窮の構図だろう。世を測るある物差しが一辺倒になり、状況が偏ってしまったいま、僕らはこの両方を、同時に考える必要に迫られている。
by 江副 直樹 2020-12-7 11:11