読書は交際?
2020.9.14僕はずっと、読書は対話だと言ってきた。著者の言説を聞き、そうかあなたはそう考えるのか、翻って僕はどうだろうと自問自答を繰り返す。本の種類にもよるが、多くは著者の思想や世界観が露出するわけだから、結果そんな展開になる。対話は延々と続いている。
先日、松岡正剛氏の人気企画、「千夜千冊」の秘密を語るとするオンライン講演があった。その窓口サイトにあったフレーズ。読書は交際。松岡氏の洞察と考察の深さ広さは、その質量で常に僕を驚かせるのだが、実はこの知の巨人は、その表現力においてもあり得ない艶っぽさをお持ちなのだ。アカデミックな方々の言葉遣いは、どうしても難解で硬直しがちだ。
それが、松岡氏にかかれば、柔らかな色香さえ放つのである。この「交際」がその好例だ。僕はこれを読んだ途端、誰と付き合い、どこまで深入りするのか、淡交もあり、浮気もあり、苦悩も快楽も創出する読書の奥行きを想い起こしていた。近頃は、経済学や人文学系の本をよく読んでいる。ある夜半、某経済学者の評伝を開きつつ、そんなことを考えた。
by 江副 直樹 2020-9-14 18:06