訛りの研究。
2018.12.7方言の特徴をもって訛りと言う。会話の端々に、言葉の隅々に現れる地域性。訛りは土地や風土だけに影響されるわけではない。業界という領域にも、方言と訛りは存在する。やたら難解な文章を書きたがる建築家諸氏に向けて、「建築家訛りだ」と揶揄することがある。
地方の訛りは風情があるが、業界方言は時として閉じ過ぎてしまう。それは、専門性の宿命かも知れない。だが、ニュアンスが蒸留されたような符牒の類は、時に表現として本質を捉えたまま昇華することがある。左官が鏝と壁の間に砂粒を挟んで塗ってしまい、線が入ることを「星を引く」と言う由。詩的でさえある。最初に知ったときは、ちょっと感動した。
欧州などを旅すると、隣接する地域なのに、多言語が引き継がれている現実があって、方言には文化的中心があると思える。そしてそれは、恐らくヒト。ある時代、突出したリーダーがいた場所が核となり、その周辺に人的蓄積が起こる。それが都市ではないか。各業界もほぼ同じ構図だ。皆が中心に向かうことで、同質性と閉塞性が生まれ、それが方言を形作る。
by 江副 直樹 2018-12-7 8:08