蛍を数える。
2020.6.12家のそばを蛍が飛ぶ。前の住まいほど山の中ではないのに、実に贅沢な環境だと思う。もっとも、群れ飛ぶというほどの数はいない。多い年なら、数十匹舞っていることもあるけれど、村では当たり前だったたくさんの蛍が連鎖する光のシンクロはさすがに望めない。
数十年前まで、日田ではありとあらゆる水路で蛍が見られたらしい。いまも、市役所の横の水路に時折蛍が光る。地方とは言いながら、それでもなんと優雅なことか。そこから数分の場所にある我が家。大きな神社に隣接し、緑が豊富で、夜は真っ暗。道路を挟んだ2本の細流、少し離れた疎水周辺で蛍が出る。筑後川の鮎の解禁とほぼ時季を同じくして現れる。
この頃になると、夕食後のプチ散歩が習慣に加わる。微かな酩酊に身を任せ、夜風に当たりながら、蛍を探すのだ。今夜は、何匹お目に掛かれるか。緑がかった黄色の光、柔らかな飛行のリズム。時に捕まえては、掌に遊ばせる。風雅な戯れ。例年、6月の中旬にはいなくなる。数匹を確認し、いい心持ちで家に戻る。あと幾晩蛍を数えることができるだろうか。
by 江副 直樹 2020-6-12 10:10