花々の遺言。
2017.5.221年を通して散歩をしていると、四季折々、季節ごとに咲く花が変わる。それはもう、見事なばかりに多様で美しい花々が、神の造型を見せつけるように、次々と堰を切ったごとくに花弁を開く。それは紛れもない生の謳歌なのだが、果たしてそれはピークなのかという話。
と言うのも、咲き乱れたあと、その花々は落花の時を迎えて、ぽとりぽとりと地表に着地するのだけれど、それは単なる遺骸、死骸の群れと呼ぶには、余りに優美で豪華なのだ。もちろん、開花直後に比べれば、花びらはくすみ、変容し、しおれている。しかし、それはそれで得も言われぬ風情を含み、色香を放っているのである。遺言という熟語が浮かんだ。
落花の連続が、草むらの中、アスファルトの上で展開される。そのレイアウトは、絵画のようでもあり、曼荼羅のようでもある。それは言葉の羅列とは次元の異なるメッセージ。そもそも、花は生殖器だ。僕らはそこに顔を近づけて、かぐわしき匂いを嗅いだりする。滑稽だが、生きるってそういうことだから。落花は大地に綴られた遺言か。なんだかねえ。
by 江副 直樹 2017-5-22 6:06