桜花繚乱。
2018.4.2毎年のことなのに、幾度となく味わっているのに、春の終わりに心が波打つ。桜はなぜこうも扇情的なのだろう。好きな言葉に、花は桜木、人は武士。というのがある。花の中では、桜に最も気持ちが躍る。なぜだか自分でもわからない。子供の頃からずっとそうなのだ。
幼児期に暮らした佐賀のお寺。その本堂の右手に老木があって、春はその下で、淡桃色の絢爛を見上げていた。背景はきっと青空だったに違いない。何年前か、日田の少渓流で毛鈎を投げた後、川沿いの田舎道を下っていたら、古く小さな小学校の入学式に出くわしたことがある。桜吹雪の中、垣間見たほのぼのとした祝い事の美しさ。決して戻らない時の儚さ。
いまの自宅は、桜並木の奥に佇む。満開の時季には、それなりの人々が訪れるが、朝晩はその気配も消える。朝の散歩や、夕餉の後の散策で、存分に味わう時間の心地よさ。満開は散り始めでもある。咲く桜。散る桜。そして敷き詰められる桜。それぞれに心はときめく。冬を過ぎて、葉も出ないうちに突然世間を染めるように咲き乱れる桜。初夏はもう目の前。
by 江副 直樹 2018-4-2 14:02