桜は散り際。
2016.4.6薄い雲が空を覆う。天気は下り坂。来月はもう鮎釣りが始まるのだ。
ハラハラと桜花が舞い落ちる。瞬く間に、時は花吹雪。3月の終わり、冬の間に蓄えた蕾が一斉に開き始める。すると、僕の心はざわざわと音を立てる。これから満開を迎えるというのに、なぜか気持ちは焦燥に駆られて、すっかり落ち着きを失うのである。
桜の満開とは、公式には八分咲きを指すらしい。確かに、すべて咲ききったと思う頃には、いくつかの梢は、大地に向かって花弁を早々と解き放っている。微かな風でまた一枚、また一枚。しばらくすると、地表には淡いピンクの花びらが敷き詰められる。足下のそれを見て嘆息。なんと豪勢な。なんと絢爛な。桜は決して咲いて終わりではない。
儚きほどに、咲き急ぐ桜。枯れ木のような木肌、その枝々に鮮やかな花びらが吹き出すように開花する。それだけでも興奮を誘うが、気持ちが煽られるのは、それがたちまち散り始めるからだ。こんな気分に陥るのは、僕の中では桜だけ。だからこそ、惹かれ続ける。陶然とか、恍惚とか、甘美とか、形容を探すも伝えきれない。今年もまた春が逝く。
by 江副 直樹 2016-4-6 22:10