未熟な科学。
2023.2.12最近関わったイベントのひとつに、神官の方が奈良の歴史を当地を巡りながら紐解くという企画があった。それはそれは、驚きと感心満載の講話だったのだが、僕の耳に残ったのは講和後の雑談だった。先生はポツリと、「神話を亡くしたらあきまへんで」と仰ったのだ。
曰く、考古学は神話をダメにする。事実を突き止めることで、曖昧さを孕む神話は否定されるが、そこに大事なものが隠れているといった趣旨だった。ピンと来た。つまり、科学を信じ過ぎると、科学より先にあるものまでないがしろにされる危険がある。それは、未来への扉を自ら閉ざしていることにならないか。神話が遺るそのことこそが示唆なのではないか。
月刊左官教室の元編集長で、泥の詩人たる小林澄夫氏は「この世で尊きものは、曖昧でバラバラで不連続(大意)」と喝破した。現時点の科学の到達点を、僕らは過剰に尊重しすぎない方がいい。まず僕らが感じ、それを科学が少し遅れて解き明かしていく。この順番は、今後も変わることはない。科学はさまざまなパズルを解決する。但し、過信は禁物という話。
by 江副 直樹 2023-2-12 4:04