春の村は花盛り。
2012.4.10暖かな東京から戻ったら福岡は雨。明日午前中は雷混じりの雨とか。春雷だ。
季節は春。村は桜の花が咲き誇っている。どこを見ても、薄桃色の桜が目に飛び込んでくる。先週末は集落の花見。会場裏の山には、大きな山桜が2本、満開の時を迎えていた。毎年思うことだが、この花の妖しさには、つい胸がざわめく。たとえわかっていても。
花の中では、桜が一番好きだと公言している。気温が上がり、春めいてくる頃に、黒褐色の枝々から突然淡いピンクの花弁を、過剰なほどに咲き乱す桜花。いつもその景色を見てしまうと、単なる美しいという形容以上の感覚に身体中が覆われる。「陶然」なる言葉が最も近いと思うが、どうも心地よくうっとりしているだけではない複雑な感情を抱くのである。
俗に、花は桜木、人は武士と言う。井伏鱒二は、古代の漢詩を、ハナニアラシノタトエモアルゾ、サヨナラダケガジンセイダと訳してみせた。咲いたかと思えば、その端から散り始める潔さ。花吹雪は桜にだけ許された絢爛たる表現だと思える。急かされているような、挑発をされているような、なんとも不思議な心持ち。嗚呼、今年も桜は、もう散り始めている。
いくつもの締め切りが重なる。川は呼んでいるが、応えることはできない。むむむ。
by 江副 直樹 2012-4-10 22:10