大衆受けの罠。
2023.8.12面倒を取り除けば、コトはわかりやすくなる。一番大事なところこそ面倒が伴っている。これはもう古今東西の世の理。社会に対して、新しいメッセージを持っている人は、当然その核心を伝えたいと考える。ところがここが最も難しい。歴史に実例はいくらでもある。
新たなアイデアとは、時代変化から生じる課題を乗り越える視点だが、それまで見聞きしたものとは違ってることが多いに決まっていて、勢い難解にならざるを得ない。従前の常識のピースをどれだけ組み合わせても、鍵が開くことはない。すると、必ずそのダイジェスト版を振りかざす輩が現れる。肝心な部分が抜け落ちているから誠にわかりやすい。換骨奪胎。
功名心なのか、浅い善意なのかわからない。そして哀しいことに、大衆は本論よりもダイジェストに心奪われる。この夏、たくさんの戦争に関するドキュメンタリーを観て、改めて壮大な理不尽を再確認したが、そこには例外なく同様のメカニズムが働いている。泣きたくなるほどに。悪貨は良貨を駆逐する。まったく、グレシャム先生の炯眼にはアタマが下がる。
by 江副 直樹 2023-8-12 10:10