同調圧力。
2020.5.7僕が最も嫌悪する人の振る舞い。みんな辛いんだから、オマエも辛くあれ。みんな哀しいんだから、オマエも楽しくなんてするな。悲哀のシェアと言うのか、こうした雰囲気って、間違いなくある。昔からずっとある。外国にもあるだろう。所謂、同調圧力なる情動。
これって、本能的な衝動とも思えるのだが、生存のための生体反応でもないような気がする。なにより、当事者ではない人々にこそ発露しやすい点が、なんとも醜悪だ。今から40年以上前、僕は高校の図書館で、小林多喜二の拷問で命を絶たれた凄惨な遺体の写真に釘付けになっていた。胸の奥がずっとざわめいていた。すぐには言葉にならない湧き上がる恐怖。
困窮する労働者を救おうとした小林が、その原因を考察し表現した著作によって殺される。手を下したのは特高かも知れないが、その状況と空気を作ったのはごくごく普通の市民だろう。子供心にそう思い至った。あのざわめきは、いまも摩耗することはない。誰もが心の奥に持つ悪魔。僕らはいまだそれを封じ込めず、飼い慣らせない。慄然とした初夏の一夜。
by 江副 直樹 2020-5-7 10:10