口当たり。
2018.10.14誰しも不味いものを好んでは食べない。でも、一瞬美味しくは感じられなくとも、しばらく口中で転がしたり、咀嚼していると予想を超えた美味滋味が滲み出してきて、飲み込む頃にはその旨さに顔もほころんでくるような意外と出会うことがある。耳触りも同じ。
しかし、多くはそこまで辿り着かない。表層の、わかりやすい、心地よさそうな情報を追うのが人の常。正しいから、受け入れるのではない。口に苦い良薬を進んで探す人は希だ。世間とはそうして作られているように思える。社会課題を本当に解決すべく、仕事を通じ、実直にアイデアを示しても、それが本質を突けば突くほど口当たりはついつい悪くなる。
だから、推し進めるならそのままではダメなのだ。表現にはゆめゆめ気をつけなければならない。近頃なら、アートとか、町おこしとか、食育とか、子供とか、よさげなキーワードが目立つけれど、安易に雰囲気に浸ることなく、その先の核心にまで到達したい。でなければ、確かに重要なテーマを僕らはいたずらに消費するだけになるのである。用心用心。
by 江副 直樹 2018-10-14 14:02