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原石のまま。

2023.5.31

あと2年半ほどで古希を迎える。ここへ至って初めて得る資格というものがあるような気がしている。つまり、過去を振り返る資格。昔話に埋没するのは、未来の見えなくなった老人の哀れだが、経験の中から普遍や原則を紡ぎ出すのも老人ならではの責務かと思われる。

by 江副 直樹 

胡麻を潰す。

2023.5.25

人生は些事に有りと喝破したのは、敬愛するコラムニストの山本夏彦。老人の域に達したいま、改めて我が身を振り返ってみても、幸福感を決めるのは結局「解釈」次第だという確信は強まるばかり。同じ出来事が、見方、受け取り方によって、不幸にも幸福にもなる。

by 江副 直樹 

白色光。

2023.5.19

リビングの間接照明が切れて、取り敢えずストックがあったLEDに換えた。蛍光色だったので、光が当たる漆喰壁は白けて見えた。明日にでも電球色の球を買いに行こう。そう思わせる嫌悪感がこころに滲む。突然、僕はかつてこんな気分を友に伝えたことを思い出した。

by 江副 直樹 

発言しない。

2023.5.13

すべき発言をしない方が多過ぎる。と直接的であからさまな指摘から入ったのは、それほど日常的に首を傾げているからだ。意見が無いわけではない、会議後の雑談では本音が出たりする。この傾向は、日本人の特質とも永く言われてきたが、もはやシャイでは片付くまい。

by 江副 直樹 

男の料理。

2023.5.7

最近は、ほぼ毎日料理をしている。家庭の事情で、また一人暮らしが始まったからだが、これまでも時折料理はしてきた。最初はいまから40年近く前。初めての一人暮らしが想いの外楽しく、設備の乏しい単身者用マンションでも、いろんな料理にチャレンジしたものだ。

by 江副 直樹 

花を拾う。

2023.5.1

毎朝散歩をする。田舎町のはずれ、大きな神社の鎮守の杜を、写真を撮りながらフラフラ歩いている。深山幽谷とまではいかないけれど、四季の変化は驚くほど多彩を極める。時は朝に限るものの、花鳥風月の豊かさに日々胸をときめかせている。中でも花は、饒舌だ。

by 江副 直樹 

もうひと月もすれば、近辺にはホタルが飛び始める。決して僕の住む場所は山奥ではないし、近くを流れるのは人工的な溝や疎水なのだが、ホタルにとどまらず、サワガニもハヤもシジミも生息する。ただ、どれも古い構築物で近代の無機質さとはどこか異なっている。

by 江副 直樹 

政治家こそ。

2023.4.19

いつの間にかプロデュースが生業になった。全体計画の統括者。最初から、すべてに関われる仕事。そう思ったので、大変なことも覚悟しながら、もう30年近くこの仕事を続けている。もっとも、それまでのコピーライター以上に、皆さんへの説明が難儀この上ない。

by 江副 直樹 

あなたは、決してやって来ない船を延々と待っているかも知れない。どこにも存在していない船を。それを求めてやり過ごしているうちに、持ち時間は減り、いつの間にか世の中はまったく様相を変えている。次の場面でもまた、永遠に来ない船を待ち続けるのだろうか?

by 江副 直樹 

山の女と。

2023.4.7

山女と書いて、ヤマメと読む。最初に出会ったのが、24歳の春だから、もう随分長い付き合いだ。最初の一匹は、大分県のY川源流で毛鉤に掛かった15センチほどの個体。僕はそれを両の掌に乗せ、河原にひざまずいてしばらく見入ったことを、いまも鮮やかに思い出す。

by 江副 直樹 

新しいプロジェクトは、突然始まるわけではない。時を遡っていくと、何年も前に思いついたアイデアを、アタマの中で転がし、発酵が進むと、まず親しい人に打ち明ける。反応を見ながら、さらに整理をしたり、表現を再考したり。それを何度も何度も繰り返している。

by 江副 直樹 

抱きしめた。

2023.3.26

今年の松の内が明け、急な展開で次男が東京の高校へ編入することになった。地元高校で1年生だった次男とは、中学の頃から2人の時間が長かった。母は自分の夢を追って、拠点を東京に移し、兄もまた東京で料理の世界に飛び込んでいる。そして次男も旅立つことに。

by 江副 直樹 

決める力。

2023.3.20

3/13、政府はマスク装着を個人の判断に委ねると発表した。その前も、屋外では装着不要の声明を出していた。僕は、マスクは不快なので、屋外ではずっと外していたし、学校でも話しづらいので、「オレは外すからみんなしといてね」と学生に言っていたものだ。

by 江副 直樹 

この世のあらゆる仕事の目的が、課題の解決だとすれば、医者になぞらえるのがより自然な感じがする。症状の原因を突き止め、患部を探り当てる。静養、投薬、注射、手術といった治療法を決め、その処方箋を書き、施術後の経過を観察し、必要あらば善後策を練る。

by 江副 直樹 

これとほぼ同義で、「決めたくない」というのもある。前者が思考放棄なら、こちらは決断放棄だ。どちらもジワジワと自らの首を絞める。誰しもしんどいことはイヤだから、後回しや敬遠をしがちなのだが、状況は確実に追い込まれていく。これはもう間違いない。

by 江副 直樹 
EZOE naoki

田舎を拠点のプロデュース稼業。その日々仕事雑感、問わず語り。

by EZOE naoki

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