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昔から感激屋ではあった。何にでも興味を募らせ、すぐに感動し、何かと興奮する。生来の特質だと思っていた。ただしそれは、歳を重ねれば、刃物が摩耗するように、徐々に慣れっこになって、いずれ薄れ弱まるものかとボンヤリ考えていた。ところがさにあらず。

多種多様な土地で、数え切れない人に会い、遊びや仕事を通じて、さまざまな喜怒哀楽を経験してきた。僕はいま65歳。多少若く見えたとしても、充分に老人と呼んでいい年齢だ。若い時は、その頃になれば、心身ともに枯れて、浮世から次第に離れ、いつか仙人のごとき境地に及ぶと思っていたし、期待もしていた。しかし、果たしてそうはならなかった。
感性のひだはより複雑になっていくものらしい。同じひとつの出来事が、微に入り細に入り、大小の感情を引き連れてきて、全身にじわりじわりと染み渡るのだ。うれしいこともそうじゃないことも、まるで細胞まで行き届いていくような反応になる。加齢による涙腺の緩みともまた異なる。皆さん、歳をとるって、意外と素敵なことなのかも知れませんぜ。

森からやって来た小さな命を前に何を想う?

by 江副 直樹 2021-5-13 16:04 
EZOE naoki

田舎を拠点のプロデュース稼業。その日々仕事雑感、問わず語り。

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