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プロデュースは説得業だと言うことがある。新たなアイデアが出て、それを構想に膨らませようとするとき、関わる人が増えていくわけだが、共感が必ずしもスムースに広がらない局面が生まれてくる。理解の不足なら再度の説明を施し、感情のもつれなら飴と鞭を考える。

ここを越えれば、状況は一気に前に転がり始めるわけだが、それだけに慎重を期しつつも、えいやっと切り込んで行く瞬間でもある。この緊張と集中のコミュニケーションは、独特の空気感を纏っていて、最もプロデュースの仕事をしている気分になるときでもある。単純な直球であってはならず、かと言って、球威を欠いたへなちょこカーブでは用をなさない。
説得に回避はない。言わない選択肢はないのである。いかに言うか、伝えるかに焦点は絞られる。タイミングを見定め、適切な言葉を選び、表情や所作でニュアンスを変え、そっと壁の向こうに言うべきを置きに行く。なにかまるで、密かに毒を盛るように、意志や意図を潜りませる感覚。いや、毒とは人聞きが悪い。苦い良薬をやさしく処方すると言い換えよう。

相手に気づかれぬよう、見抜かれぬよう、細心に大胆に。

即効性を狙うときも、漢方薬のように仕込むときも。

by 江副 直樹 2019-8-19 14:02 
EZOE naoki

田舎を拠点のプロデュース稼業。その日々仕事雑感、問わず語り。

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