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文脈の消失。

2018.8.17

さまざまなプロジェクトが、時間を掛けて成就をめざす。発芽のようなアイデアの湧き出しがあって、発想は構想となって具現化が始まり、流れは太く強くなって加速する。しかし、一方では、その途上で計画の迷走や暴走が起こることがままある。なぜだろうか?

根の枯れた大木、文脈の断絶。言い方はいろいろあるが、過去からの経緯が共有されないのは時限爆弾を抱えるに等しい。いや、知ってはいるだろう。お伽話のように。聞いてはいるだろう。フィクションのように。芽の成長の話なんて地味すぎる。物語がいかに始まったかはあまりに遠い。理解、共感が期待できるのは、強靱な想像力を備えた一握りの人々だけ。
創業者が苦労話をしたがるのは、その経緯を伝えたいからだ。大切なコンセプトはそこに宿っているからだ。だが、いたずらな昔話は疎まれる。航路が安定し、加速する客船に乗るのは実は簡単だ。しかしその時、船の開発秘話や進水の想い出や、ペースを掴むまでの操舵の試行錯誤は見えなくなる。こうして優雅なはずの船旅は、退廃を孕んでいくのである。

凪いだ海を静かに進む船。プロジェクトはここに来るまでが勝負。

目的地が見えると皆興奮する。ここからの参加希望の多いこと。

一人で乗れる船は気楽なものだ。僕は本来、こちら側の人だと思う。

船出はいつも五里霧中。勘と論理を棹にして漕ぎ出していく。

by 江副 直樹 2018-8-17 12:12 
EZOE naoki

田舎を拠点のプロデュース稼業。その日々仕事雑感、問わず語り。

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