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もうひと月もすれば、近辺にはホタルが飛び始める。決して僕の住む場所は山奥ではないし、近くを流れるのは人工的な溝や疎水なのだが、ホタルにとどまらず、サワガニもハヤもシジミも生息する。ただ、どれも古い構築物で近代の無機質さとはどこか異なっている。

汽水域に棲むものだと思っていたシジミが、内陸の奥にも生息することを知ったのは、山村に住み始めた頃だった。調べてみると、驚くほど身近な存在であることがわかった。もっとも、コンクリートの3面護岸のような場所にはもちろんいない。素掘りか、砂礫が堆積するような流れに限られる。僕はその事実を知って、土木技術の新たな可能性を感じ始めた。
近代の土木技術は、自然を力で押さえつけるようなコンセプトに違和感がある。ところが、脱亜入欧が叫ばれる明治以前の土木技術には、驚くような人智が垣間見られる。わが家のそばを流れる小ヶ瀬井路もそのひとつだ。およそ200年も前に築かれたインフラが、いまだ機能しかつ上記の生物たちも抱擁している凄さ。そんな新時代のインフラを作ってみたい。

昨年初夏、隣町の素掘りの細流にいたシジミたち。

by 江副 直樹 2023-4-25 10:10 
EZOE naoki

田舎を拠点のプロデュース稼業。その日々仕事雑感、問わず語り。

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