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そう言ったのは、確か江戸時代の国学者だった本居宣長。その頂点を源氏物語と位置づけたらしい。それはともかく。詫び寂にしても、もののあはれにしても、よくぞこのボンヤリとした感覚を鮮やかに掬い上げてくれたものだ。先人の炯眼に心より敬意を表したい。

物事にはすべて行間がある。裏がある。昨今の数字至上主義は、ここを大きく見落としている気がしてならない。簡単に見えないところにこそ、大切な何かが潜んでいる。その真実を知ることが教養の真髄であり、その実践が文化を創ると思っている。非科学なのではなく、科学もいまだ到達できていない領域と捉えることが、何より科学的なのではあるまいか。
夕方、あるいは夜明け。神社の境内からヒグラシの聲が聞こえてくる。歌っているような、むせび泣いているような。寂寥感が胸に迫る。超俗の境地で詩を紡いでいたいが、日々の由無し事は次々に現れては、たくさんの時間を潰していく。そんなときに、大事なことはこっちだよと、言わんばかりのささやくようなビブラート。あともう少しだけ聞いていよう。

ヒグラシが啼くのは早朝と夕方だけ。なぜだろう?

 

 

by 江副 直樹 2022-7-20 10:10 
EZOE naoki

田舎を拠点のプロデュース稼業。その日々仕事雑感、問わず語り。

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