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雨の後の、どこか生暖かい一日。周囲の梅はようやく五分咲きといったところ。

飼い猫が死んだ。享年11歳。人間で言えばおよそ70歳の往生。名前を「ちゃらん」と言った雌。同腹の兄弟がいて、そいつには「ぽらん」と名付けて、一緒に日々を重ねた。我が家の長男と同い年。冬以外は戸外で過ごすような元気者たちだった。

数年前、雄のぽらんは出奔。行方知れずとなって、以来ちゃらんだけが、毎日餌をねだり、庭で日向ぼっこをし、ときに狩りの獲物を貢ぎにやってきた。僕らにとっては、家族も同然。空気のような関係だったちゃらんが突然逝った。おばあちゃんになったね、とは言い合っていたが、つい先日軽トラックの下で息絶えていたのを発見した。
犬も猫も、死に際は人に見せないと思っていた。亡骸はまだ生きているようで、家族全員がショックを受けた。子供たちにとっては、生まれて初めての身内の死。長男は静かに涙を流し、次男は号泣した。先代の「のらり」と「くらり」に続き、僕ら夫婦、そして子供たちにとってかけがえのない存在だった。ありがとうと言わせてくれ。合掌。

楽しかったかい?

次男がつくった色紙の首飾りを掛けた。つけていた首輪は形見になる。

供物に包まれて。

手作りの手向けの花を供え、道行きの食べ物を葉蘭に詰めた。

長男とつくった墓。

桜と百日紅の間に墓を掘った。女房のケープで身体を包み、安置した。

最後の別れ。

家族全員で合掌、黙祷。死に向き合った子供たちはなにを想っただろうか。

by 江副 直樹 2012-3-19 22:10 
EZOE naoki

田舎を拠点のプロデュース稼業。その日々仕事雑感、問わず語り。

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