
語彙の法則。
2025.2.28タイトルを、説得の法則にするか、少し迷った。何かを他者に伝えるとき、僕らは基本言葉を使う。ところが、同じ国語を使っていても、日本ほど同一性の高い民族であっても、その語彙、ボキャブラリーは実のところかなりバラついている。伝達すら覚束ないほどに。
その人の社会的なポジションや業界、地域などで、普段使いの言葉の群れはそれぞれ異なる。業界には符丁が、地域には方言が育って、意思疎通の効率を上げているのだが、それが対外的には壁を作っていく皮肉。天気の話くらいならまだしも、まったく新しいアイデアのプレゼンなんてことなら、そこそこで集積された語彙のギャップは想像以上に大きい。
僕の生業であるプロデューサーとは言わば説得稼業だが、常に心掛けているのは、相手のボキャブラリーで話すこと。おまけに伝える内容は、先方にとっては未知の企画提案がほとんどなので、専門用語や流行言葉などは実にリスキーで、口に出すには細心の注意が要る。日常的に越境し、異分野の老若男女と交わる僕は、翻訳作業が習い性になっていると思う。
by 江副 直樹 2025-2-28 11:11