要約の落し穴。
2023.11.18コピペの時代だ。原典からの引用は、文字が生まれて以降、古代からあっただろう。それが、デジタルが日常化した頃から激化した印象がある。限られた物書きにとどまらず、格段に増えた情報産業に関わる人たちが加速させ、一般ユーザーが罪の意識もなく拡散する。
優れた詩の一節が、東西に通じる諺が、長い時間を掛けて文化の伝播として、広まり定着していくのとは、根本的に違う気がする。もっと安易に、もっと短絡的に、引用と紹介が濫発する感が拭えない。ずっと唱えられてきた高度情報化社会は、情報や知恵の共有が進み、世界がより良い状態になる祈りが込められていたはずだが、その実態は果たしてどうか?
組織にしても、社会にしても、経緯や背景、行間は徐々に排除されていく。多くの歴史を振り返ると、これはもう宿命的だと思わざるを得ない。これは人が加齢とともに劣化するのと同じ。成熟との強弁には限界がある。デジタルの力を借りた要約という僕らの気楽な振るまいが、進歩の速度を上げているようでいて、その実本質がこぼれ落ちることを警戒したい。
by 江副 直樹 2023-11-18 11:11