蜩は啼かず。
2024.8.31この夏、不思議なことに蜩の啼き声を一度も聞かなかった。今春のヤマメ釣りでも、彼らの餌となる羽虫が非常に少なかった。結果、過去記憶にないほどの貧果に終わった。蜩が啼かなくても、特に実害はないんだけれど、それにも増して得も言われぬ寂しさが残るのだ。
夏の夕方、あるいは明け方。林の奥から聞こえてくる、カナカナの調べ。これが僕にはまるで儚い音曲のように聞こえる。同時にその響きがなんとも心地良くて、両の耳で受けるとも受けないともする内、日々の由無し事がたちまち静かに洗い流されていく。しかし、なぜ今年は現れなかったのか。警告か、メッセージか。神の妙なる差配かと思えてくる。
ネットやテレビで次々と流れてくる、どこか扇情的なニュース以上に、僕は自然の微妙な変化の方が気に掛かる。徒に深刻に受け取るのも良くないが、こうした変化は確かにあって、一般に裏年などと言われる。そう言えば、今年はタケノコも少なかったと聞いた。まあ、そんなことさえ風情の一端と構えていればいいのだろうか。でも来年は聞きたいなあ。
by 江副 直樹 2024-8-31 10:10