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草花の春 1

2020.3.15

白い秋が終わり、玄い冬が居座る。落葉樹は葉を落とし、風景は色を失い、枯れ野が広がる。木枯らしが舞い、時に雪が積もり、幾度も霜が降りる。自然の命の鼓動は音を潜め、気配さえ消えてしまう。そんな中、枯れ草と落ち葉の隙間から緑が現れる。早春。

最初に色を添えるのは、オオイヌノフグリ。可憐なブルーの小さな花。別名瑠璃唐草。草花では、この花が最も美しいと思っている。ほぼ時を同じくして、薄紫のホトケノザが現れる。どちらも次々に花を付けるが、季節はまだ冬の終わり。度々霜に、時には雪に見舞われる。ホトケノザは逞しくはびこるが、オオイヌノフグリは夜毎、花を落とす。
次にスミレが咲く。小さな株が、ポツリポツリと存在を示して、濃い紫の花を釣り鐘型の細い茎にいくつもぶら下げる。この頃になると、気温が緩み、キンポウゲが可愛い黄色い花を咲かせば、春の気分が滲み出てくる。気温の上下動が続き、この頃には、梅はすでに盛りを過ぎていて、世間は待ちに待った春が、身近に迫っていることを知るのである。

嗚呼、なんと可憐な春だろう。風で小刻みに揺れる。

仏の座とは。ここに釈迦が鎮座ましますのか。

平地に群落を作る。日に日にその数が増える。

ワックスがけしたような光沢のある花弁が特徴。

by 江副 直樹 2020-3-15 16:04 
EZOE naoki

田舎を拠点のプロデュース稼業。その日々仕事雑感、問わず語り。

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