残雪有情。

夜半からの暖かな雨で、谷はしっとりと濡れている。隣家の蝋梅が開き始めた。

この冬は、いまのところ大雪は降っていないが、何度か積雪に見舞われた。雪は新雪に限る。朝、人もクルマも通っていない雪面が、すべてを覆い尽くしていると、幾つになってもわけもなく心が躍る。散歩も、いつも以上にあちこちを巡ったり。

そんな勝手なわが想いとは関係なく、遅かれ早かれ雪は溶け始める。やおら焦るが、なにもできない。結晶を崩した雪は、瓦の上、畑の上、道上を、氷水となって流れ、地中に染み込んでいく。陽が差すとその速度は一気に上がり、白い風景は瞬く間にいつものそれに戻る。ところが、山陰や日陰では、雪は簡単には溶けない。じわじわとじわじわと。
風が吹けば舞うほどに、ふわふわだった新雪は、日中に溶けかかり、夜の放射冷却でまた凍るを繰り返す。雪は徐々に透明でやわらかな氷の部分を増やしながら、じわじわとその面積は減らして、ついには消え去ってしまう。こうした残雪には、当然新雪のような興奮はないのだが、加齢による懐の深さか、何とも言えない風情を感じてしまうのである。

今夜は福岡県那珂川町で元気計画のことなどを喋った。今週末もレクチャーがある。

雪が溶け始めると、朝、あちこちに氷柱がお目見えする。これは苔の先に。

雪の間から伸びている草の葉が、霜に縁取られている。早朝ならではの景色。

シャーベットに包まれたような瑞々しい雑草。サラダとして食べられそうな。

溶けかかった雪のアップ。肉眼では見づらいが、美しいオブジェがそこに。