
月光の訪れ。
2025.1.13自宅の周辺は、夜は闇に包まれる。境内横の古い住宅地は、外灯の類も最低限でわずかな明かりを放つだけ。初夏のホタルもだからこその美しさ。静けさとも相まって、とても穏やかな佇まいが気に入っている。中でも、満月の時などはさらにその風情が深まるのである。
わが家の窓は決して大きくはない。断熱のことと明るすぎない家を望んだから。そんな家だが、満月の夜など室内まで月光が差し込んでくる。これは非常にうれしい発見だった。特に2階の和室と寝室には、驚くほど明るく、けれど美しい光が降り注ぐ。横になったら、丸い月の姿は、直接見えることはないのだが、思わず窓際に立って夜空を見上げてしまう。
それが就寝時なら、ひとしきり満足して、遂にベッドに入るのだけれど、それでも月は宇宙からの光の帯となって漆喰の壁をやさしく照らすのだ。布団の中からそれを眺めては、ひとりほくそ笑んでいる。月光の訪れる部屋で寝入っていくことの、なんと贅沢なことだろうか。明るすぎる都市では決して味わえない特別な夜。ほら、そろそろ月が天に帰っていく。
by 江副 直樹 2025-1-13 19:07