文章作法。
2021.10.7気づけば、売文稼業の末席。10代の終わりには、詩を書いて生き延びられたらと考えたこともあった。子どもの頃から、作文は苦ではなかった。言霊などと言うが、文章もまた面白いものだ。誰も知る字句の組み合わせなのに、見たことのない世界や次元が現れる。
書くこと以上に重要なのは読むことかも知れない。名文家は数多い。但し、何を持って名文と言うか、それは何を持って美味しいと言うかと同じで、ひとえに感覚の世話になっている。甘さ、辛さ、渋さ、色艶、行間の奥。乱読を繰り返している中で、唸ったのは山本夏彦。短いコラムで、鮮やかに切り取られた本質が、見事にそのまま巧まざるメッセージ。
某日、内田百閒の随筆を肴に呑んだ。名にし負う粋な文字組みで、大家の日々を楽しく垣間見た。作文の骨格、肉付け、さらに所々の外し。いや、これはご本人に聞かなければ真意はわからない。言葉には旬があるとは僕の繰り言。語彙の中身は必ず時代の風を受ける。昭和半ばに生まれた僕は、さて何を記すか、如何に綴るか。文章修行についぞ終わりはない。
by 江副 直樹 2021-10-7 12:12