
妖艶なるもの。
2024.3.31毎年繰り返し書いている話題はいくつかあるが、桜にまつわる想いもそのひとつ。花の中では最も好きで、その妖艶な美しさに陶然としながらも、移ろいの早さに背中を逆撫でされるごとくにソワソワとさせられ、散った後の花弁の絨毯や花筏の儚さについ悄然となる。
花は桜木、人は武士。とても好きな言葉である。その本質は、一級の美しさを伴う高貴な潔さだろうか。それが故に、かつて理不尽この上ない特攻隊の美化にも悪用された。その記憶を多くの日本人は、消しがたい深い傷として抱えている。一方で、近年地力を上げてきたラグビー日本代表のユニフォームは、特上のプライドを象徴して桜のジャージと形容される。
桜花は切ない。わずかでもいいから、しばし満開の様相を保てばいいものを、咲いた端から散り始める無常感は、桜をおいて他にない。これが人の一生と重なって、彼我の胸を苛むのである。僕は、どこか派手すぎるソメイヨシノより、花弁白く端正なヤマザクラを良しとしている。鑑賞を前提としない奥ゆかしさに心惹かれるのである。今年もまた桜が咲いた。
by 江副 直樹 2024-3-31 10:10