初冬の錦絵。
2024.12.12秋が遅かった。今年ほど紅葉の進行がゆっくりだったことはない。11月上旬、毎年通う大分県庄内町の男池の森に出かけた。噂通り、木々の色づきはさっぱりだった。過去こんな状況は経験がない。暑い夏が長引いて、秋が短いなどという声も聞こえた。もはやこれまでか。
一旦は諦めたその月の下旬。急に気温が下がり始めた。やっと訪れる初冬。すると、あちこちのモミジやイチョウが色を変えているではないか。師走になろうとするこの時季に?まさかと思ったが、日に日に紅葉は進んでいく。日々歩く神社の周辺も着実に色づいていった。それからはいつもの秋のごとく、豪華絢爛な錦絵が繰り広げられた。遅れてきた愉悦。
描き染めの走りは、モミジとイチョウで、山ならハゼが先行する。モミジは、赤く鮮やかに染まるものもあれば、黄色いまま落葉する種もある。イチョウの黄色は胸打つような色目で、毎年僕を魅了する。そしてこれらの紅葉は、ピークを過ぎて落葉に移ったら、今度は地表を覆って見る者の目と心を奪うのだ。自然のしたたかさに気づかされたこの秋の異変。
by 江副 直樹 2024-12-12 21:09