一枚の写真から。
2021.4.19いまから37年前に撮影した写真。巨大なサクラマス。僕は当時失業中で、持て余す時間を利用して、この魚の調査に勤しんでいた。晩秋の数週間、防水カメラと借りたビデオを持ち、毎日1人でダム奥の小渓流に通った。ある日の夕刻、幸運にも数枚の撮影に成功した。
北九州のとあるダムに流れ込む小さな渓流。そこに巨大なサクラマスが産卵に遡上することは、一部の釣り人の間では公然の秘密だった。ヤマメの30%ほどは陸封される前の遺伝子を持っていて、下流にダムがあるとそれを海と錯覚してサクラマスに変わるとされている。まさにここがそうだった。しかし、噂ばかりで見たことはなかった。それがついに。
僕はその写真を、当時購読していたフラフィッシング・ジャーナルという在京の同人誌に投稿した。錚々たる同人が運営するマニアックな釣り雑誌。しばらくして、編集長の中沢孝さんから電話が掛かり、皆が面白がってるから載せたいと告げられ、驚きながら承諾した。それが遠因となり、その半年後、僕は福岡でコピーライターとして歩み始めることになる。
by 江副 直樹 2021-4-19 7:07