ほどなく40歳。
2018.3.22いや、フライボックスの話。フライ、つまり毛鈎の容れ物を僕ら毛鈎釣りの連中はそう呼ぶ。この小さな、アルミ製の箱を買ったのは、いまから40年近く前。ホイットレーというメーカーの6室のモデル。職人の手作り。その後機械生産に変わり、もはやアンティーク。
一部屋ずつ開閉ができ、川でひっくり返したり、強風で毛鈎が飛ばされるリスクが少ないが、そんな機能以上に、どれを出撃させるか、見定める儀式が楽しくなる小品。手触り、重さ、申し分ない。ベストからバッグに装備が変わっても、陣容から外されることはない。どころか、収まる数がちょうどいいので、いまも頻度の高いベストコレクションの格納庫だ。
水面を流れる、あるいは水中から羽化のために浮上する羽虫を、波紋を作りながら捕食するヤマメ。もう10年以上、ライズフィッシングというこの釣りにはまっている。波紋と音を確認しながら、ボックスを開けて、フライを交換する。心臓は高鳴り、手は震えがちだが、触り慣れたこのボックスのお陰で、僕は平常心を取り戻す。付き合いはまだまだ終わらない。
by 江副 直樹 2018-3-22 22:10