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火祭りの夜。

2017.10.15

それは原初の姿だった。ケベス祭。国東櫛木の岩倉社で行われる火祭り。紀元の時より続く由来も不明な奇妙な祭。随分前から噂は聞いていて、国東の友人たちにも誘われ、今年ついに足を運んだ。雨の予報だったが、この約2000年の間、雨による中止は一度もない由。

果たして、雨はぱらつくのみ。神事は厳かに始まった。一帯には白装束の男たち。炎が立ち上るシダの山を護るのはトウバ。そこに突入を図るのはケベス。両者攻防の末に、ついにケベスは飛び込み火の粉をまき散らす。それを合図にケベスたちは燃えさかるシダの玉を棒の先に掲げ、境内を走り回るのである。逃げ回る参拝者。その狂騒は未経験のものだった。
美しく、恐ろしく、少し滑稽で、みな悲鳴を上げて逃げる割には、多くの顔は笑っていた。心の奥底で何かが音を立てる。炎に乗った託宣。常々、暮らしの中から裸火を遠ざけるべきではないと思っている。IHばやりの昨今だが、わが家にはガスコンロが鎮座する。薪ストーブは断念したが、大事なのは裸の火だ。炎への畏れを僕らは感じ続けなければならない。

祭はいよいよクライマックスへ。境内が異様な空気に包まれる。

ついにケベスが火の玉を掲げて走り出した。ここまで激しいとは。

右から左から後ろから。火の玉が迫ってくる。逃げ惑う人々。

裸火を身近に置いておきたい。火は神からのメッセージなのだから。

by 江副 直樹 2017-10-15 23:11