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プロデュースを解するキーワードのひとつに、「全体」というのがある。プロデューサーを全体計画の統括者などと言ったりする。僕がこの道を志したのも、高度経済成長期に進んだ分業や細分化が、再編集されずにそのまま遊離していると感じたのがきっかけだった。

分析とはよく言ったもので、全体を忘れて部分に焦点を当てると、そこは鮮明に見える。それを集めれば、鮮明な全体像が現れると考えたとしても不思議はない。だが、個々のパーツは、常にリンクで繋がっていて、ときにそれは目に見えない。部分だけを詳らかにしたくとも、全体を持たない部分などないのである。この認識を、僕らは全体観と呼んでいる。
これは、物質でも、生命体でも、組織でも、アイデアでもまるで同じで、「全体」の中の「部分」という、動かしようのない真実を念頭に置いておくことが肝心だ。知識という「部分」が、柔軟なリンクで「全体」を成すとき、それを知恵と言う。福岡伸一氏の著書「世界は分けてもわからない」は、そのタイトルだけで万冊の価値があると思うのは僕だけか。

部分と部分の関係も見えにくいが、全体もまた見える人は多くはない。

by 江副 直樹 2017-3-26 6:06