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岡潔。ぼんやり名前は知っていたが、先頃、森田真生氏の「数学する身体」を読んで、改めて興味を持ち、さっそく文庫本をめくっている。もっとも、数字や数式を睨んでいるわけではない。領域としては、数学者のしたためた随筆。これがもう、すこぶる面白い。

心を奪われたのは、このフレーズ。「数学の中心は情緒である」。なんてことを言うんだ。世界的な名だたる数学課題を解いてみせ、紀州の山中で、畑仕事と数学研究をして暮らし、挙げ句、こんな普遍的で本質的なことを平易な言葉でおっしゃるのだ。奇人変人の評も少なくない大学者だが、学問の本当の意味、教養の本来の意義など、頷くことのみ多かりき。
物事は、極めればどれも普遍に至る。細分化された小径にとどまるのではなく、その先に広がる真理原理を見出すことの興奮。岡潔は、常にここを見据えていて、またそれを成就する才覚が伴っていた。及ばずながら、その端緒でいいから、真理原理を捕まえたいと、いつも願っている身にとっては、楽しくも実に貴重なレクチャーであった。さて、もう一冊。

ここ数日、お昼はデッキで日光浴をしつつ、ゆっくり項をめくっている。

宇宙を俯瞰し、森羅万象を貫くシンプルな法則に辿り着きたいと思う。

by 江副 直樹 2017-5-31 15:03